【Quintet】
 晴が口笛を鳴らした。

『はい、お先ー。悠真ってめちゃくちゃ頭良いくせになんでジャンケンは弱いんだろうな』
『……お前は平気か?』

廊下に行きかけた晴が足を止めた。

『何がー?』
『ゴールデンウィークのキャンプ。一泊二日は一緒だぞ』

誰と、とは悠真は言わない。言わなくても二人には自明だからだ。
晴は笑っていた顔を強張らせた後、また笑った。

『お気遣いどうも。大丈夫。ちゃんとやるって』
『隼人は全部わかってるけど、美月ちゃんと沙羅には悟られるなよ』
『オーケーオーケー』

 再び口笛を吹いて階段を上がっていく晴の足音も聞こえなくなり、静寂に包まれたリビングで悠真は思考を動かした。

やらなければならないことは山積み。明後日までに曲をふたつ仕上げなくては。

 キッチンでコーヒーメーカーをセットした彼は携帯電話のメール画面を開いた。数分前に届いた星夜のメールを読み返す。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
しばらく実家から仕事行くことになった。
アルバムのジャケ案は仕上げて俺の部屋のデスクにまとめてあるから検討お願いします。
沙羅に俺のこと聞かれたら悠真が話せる範囲で話して。
迷惑かけてごめん。
 ______________


『迷惑とか……今さらなんだよ。バカ野郎……』

 コーヒーが出来上がるまでの間、ダイニングテーブルに残された星夜が沙羅宛に書き記したレシピ集を悠真はぼんやり眺めていた。
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