【Quintet】
 港区に所在する芸能事務所エスポワールの八階会議室にはUN-SWAYEDのメンバーと同じ事務所の所属俳優、一ノ瀬蓮、撮影監督が集まっていた。

 UN-SWAYEDがミュージックビデオを作るのは今回が初めて。出演するのは蓮だ。

ストーリー仕立てのミュージックビデオの構成を話し合っているのは悠真と蓮、撮影監督のみ。
星夜はパイプ椅子の背にもたれて、勝手に進む打ち合わせを黙って聞いていた。

 打ち合わせを終えて監督が去った会議室にはまだ蓮とUN-SWAYEDメンバーが残っている。蓮が口火を切った。

『クソ社長、今イタリア行ってて戻りは明後日なんだ。俺が代理で話をまとめるよう頼まれた』

 蓮は世間的には知られていないが、葉山行成がギタリストを務めた伝説のロックバンドemperorのベーシスト、SATORUの息子だ。

悠真と海斗に至っては蓮とは20年来の付き合い、UN-SWAYED全員の兄貴分のような存在だ。

『社長は解散は考えてないってさ』
『星夜が抜けた後に新メンバーを入れるってことか?』
『だろうな』
『星夜以外の奴、入れる気はねぇよ。俺は星夜としか歌わない』

 蓮と悠真が進める話し合いに海斗が口を挟んだ。子どもっぽく拗ねている海斗は星夜とも目を合わせない。

『海斗。昔とは違うんだ。仕事でやる以上は個人的な感情は捨てろ。これは事務所を巻き込んだ問題でもあるんだ』

悠真に叱責された海斗は舌打ちした。
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