【Quintet】
 拗ねる海斗を晴がなだめ、蓮は星夜に視線を移す。

『星夜、お前が抜けるのは確定的なんだな?』
『……ああ。皆には悪いけど、俺はUN-SWAYEDを辞める。29日の俺の誕生日に親父が正式に俺を次期社長として重役達に発表するらしい。決定事項だから止められないんだ。……ごめん』

 UN-SWAYEDは何事にも影響されない、左右されないバンド……そんなものは幻想だ。

彼らは一介の歌手に過ぎない。歌うことでしか力を持てない彼らは、大きな流れに逆らう術を持ち合わせていない。

 全員が歯がゆい想いを抱えて話し合いは終わった。午後は海斗と星夜は歌のレッスン、悠真は曲作り、晴はレコーディング。

海斗は星夜が抜けることを最後まで反対している。今も納得はしていないだろう。
しかしその想いを星夜にぶつけはしない。代わりに、海斗と共に歌っている時の海斗が出す声から、歌い上げる歌から、彼の想いが伝わってきた。

 二人がレッスンの最後に選んだ曲は3rdシングルの〈夢逢い~YUMEAI~〉

主旋律を歌う海斗とファルセットで歌う星夜の歌声がハーモニーを奏でる。海斗とハモるのは気持ちがいい。音楽の世界では嫌なことをすべて忘れられた。

※ファルセット…男性が通常の音域よりも高い声域で歌う技法。

 夢でもいいから
 もう一度君に会いたい
 夢の中だけでも君のぬくもりを感じたい
 終わらない夢を
 君と永遠に見ていたい

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