【Quintet】
 UN-SWAYED初のラブソングは二度と逢えない女性に夢の中だけでいいから会いたいと願う男の物語。サビで繰り広げられる海斗の低音と星夜の高音が合わさる響きが評価され、カラオケでも人気の楽曲だ。

『夢逢いに出てくる“君”って沙羅のことだろ? 海斗が書くラブソングっていつも沙羅をイメージしていたんだな』
『別に……そんなんじゃねぇよ』
『照れんなよ。昨日沙羅とキスしてたくせに』

 飲んでいたミネラルウォーターを口から溢しそうになった海斗は慌てて口元を押さえて星夜を睨んだ。

『……見てたのか?』
『いやー、見るつもりはねぇ、なかったんですヨ。でもあんな家の近くで堂々とキスされたらねぇ、じーっと見ちゃうよねぇ』

抱き合う沙羅と海斗を見掛けたのはマンションを出た先でバイクの信号待ちをしている時だった。よもやキスシーンを星夜に見られているとは思いもしなかった海斗の顔は、赤く染まっている。

『何顔赤くしてんだよ。カイくんはウブだなぁ』
『俺をそうやって呼ぶな』
『カイくんって呼んでいいのは沙羅だけってか? そんなに好きなら早く自分のモノにしろよ。さっさとモノにしないと悠真か他の誰かに盗《と》られちまうぞ』
『他の誰かって例えばお前とか?』

 星夜を見据える海斗の目は冗談ではなく本気の目をしている。星夜は肩を落とした。

『安心しろ。俺は……盗らねぇから。海斗と悠真の気持ち知ってて裏切るわけねぇだろ』
『じゃあ昨日沙羅を抱き締めたのはなんで?』
『うわっ。知ってるのかよ。んー、沙羅って子犬みたいで可愛いじゃん。ついギューッてしたくなるんだよ。ヤキモチ妬いてんのー?』

茶化して誤魔化しても海斗には通用しない。それでもこの件は茶化すしか手段がない。

『星夜の女好きは昔からだし、どうせ沙羅に対してもその辺の女と同じ扱いだろうと思ってた。けど違うよな。お前の沙羅への態度見ていればわかる。お前、沙羅が……』
『海斗。わざわざ自分から煽るな。……先に帰るな。お疲れさん』

 決定的な言葉を言われる前に自ら話を打ち切った星夜は事務所のレッスンスタジオを後にした。
< 75 / 433 >

この作品をシェア

pagetop