【Quintet】
「結城さん。私の父は婚約の件を知っているのでしょうか?」
『お父様はまだご存知ないが、貴女のお祖父様からは快諾の返事をいただいていますよ』
「あなたと祖父の間でどんなやりとりがあったとしても、私は父以外の人の言うことは聞きません。葉山の家と私は関係がありません」

 結城に食ってかかる沙羅は星夜の知らない女の子だった。星夜が知っている優しくてふんわりとした空気が消え去った沙羅は冷めた目で結城を見据えている。

息子の星夜でさえ直視するのを躊躇う結城の冷たい瞳を同じく冷たい瞳をした沙羅は平然と見返していた。

『貴女は大した人だ。しかし沙羅さん、いくら貴女が葉山の家と関係がないと言っても貴女に流れる葉山の血筋は変えられない。貴女は葉山一族の現当主、葉山栄吉さんの直系のお孫さんであり、葉山本家の孫では唯一の女性だ。由緒ある家系の男は家を継ぐものだが、女は家と家を繋ぐ役割を担っている。貴女にもその役割が存在するんですよ』

同居の前に沙羅に関する情報は悠真や海斗、沙羅の父親の葉山行成からある程度は聞いて知っている。沙羅の父、行成は資産家葉山一族の生まれだ。

(そっか。沙羅は葉山本家の孫……それもたったひとりの女の孫か。親父の作戦が読めた)

 沙羅の祖父と星夜の父親が結託して沙羅を家と家との橋渡し役に使うつもりなのだ。自分だけならまだしも、沙羅を道具として扱われるのは我慢ならない。
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