【Quintet】
 突然のキスに一驚《いっきょう》する沙羅は星夜の胸板を押してキスから逃れようとするが、肩を抱かれて後頭部を固定されていて逃げられない。
わずかに開いた口の隙間から柔らかなものが侵入してきた。沙羅の口内で星夜の舌が絡まって激しく動いて呼吸もできない。

 昨夜の海斗との触れるだけのキスとは違った。もっと激しくて切なくて、とろけるように甘いキスに犯される。
ファーストキスが海斗ならば、こんなに激しい大人のキスの初めての相手は星夜だ。どうしていいかわからない彼女はただただ星夜の熱に呑み込まれていた。

角度を変えては何度も何度も、星夜は沙羅の唇に吸い付いた。
至近距離で見るブルーグレーの瞳はとても綺麗な色をしていて、その瞳が閉じられると伏せた長い睫毛が沙羅の肌に触れた。

 降り注ぐキスの嵐。苦しくなって肩で息をする沙羅の額に星夜の額が接触した。二人分の吐息が二人の間で交ざり合う。

『……ごめん。沙羅の気持ち無視してキスして……。最低だな』

 ブルーグレーの瞳は怯える子犬のように揺れている。沙羅を逃がすまいと力強く触れていた彼の指先も今は恐る恐る彼女の頬を撫でていた。

『俺のこと嫌いになった?』
「嫌いにならないよ。絶対、ならない」

 項垂れる星夜の首もとに手を回して彼を抱き寄せた。怒られた子どもみたいにしょげて丸くなる背中をポンポンとさする。

キスに戸惑いはしたが嫌ではなかった。見ず知らずの男から突然こんなことをされたら犯罪ものだ。でも星夜だから嫌じゃなかった。
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