【Quintet】
 一番どうすればいいかわからなくて苦しんでいるのは星夜だ。今もそんなに怯えた瞳をして震えた声で、沙羅に嫌われるのを恐れて……。

『……沙羅ってさー、天然?』
「え?」
『たった今、許可なくキスしてきた男をこんな風に抱き締めて。せっかく必死で抑えてるのにそんなに俺の理性壊したいー?』

 肩越しに星夜の吐息を感じた。視線を下げるとこちらを見上げる彼は妖艶に微笑んでいる。

……立ち直りが早い。早すぎるっ!

『いちいち可愛い反応してくれるから参るよ。言っとくけど俺、不完全燃焼だからね。いつ襲いかかるか、わからないよ?』
「えっ……ええーーーっっ!」

 狼狽えて泳ぐ視線はすぐさま星夜に捕食される。星夜の唇は艶やかな赤色。
あの唇がさっきまで自分の唇と重なっていたかと思うと羞恥心でいっぱいになった。

『沙羅と出会ってまだ少ししか経ってないけど、俺は沙羅のこと女の子として見てる。結婚相手が沙羅なら文句ない。沙羅は俺のこと、どう思ってる?』
「星夜のことは好きだよ。でもその好きは……友達としての好きって言うか家族みたいな感じの……」
『恋愛対象ではないんだろ?』
「……うん」

 海斗とも星夜とも、恋愛対象ではない男とのキスは嫌ではなかった。本当に二人は恋愛対象ではないの?
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