【Quintet】
 渋谷のマンションの地下駐車場に星夜のバイクが到着した。

「悠真にはメール入れておいたけど皆帰ってるかな?」
『帰ってると思うよ。今日は三人とも夜までの仕事は入ってないはずだ』

星夜のバイクの隣には晴のバイクが並んでいる。結城家ではひとりぼっちだったバイクもここではひとりぼっちじゃない。

「婚約の話、皆に言うの?」
『うん。あいつらには隠さずに全部話そう』

 不安がる沙羅の髪をくしゃっと撫で、彼女と手を繋いで十九階でエレベーターを降りる。玄関に入った沙羅と星夜を迎えたのは晴だ。

『お帰りー!』
『ただいま。なんか、すげーいい匂いしない?』
『今日はなんと、悠真様の肉じゃがの日だからな』
「わぁ! 悠真の肉じゃが!」

晴は沙羅と星夜が一緒に帰宅した理由も聞かずに普通に接してくれる。陽気な晴はこの家の太陽のような存在だ。

 リビングでは海斗が雑誌を見ながら無愛想に二人を一瞥した。元々口数の多くない海斗だが今夜はさらに無口だ。

『……座れば?』
『おう』

海斗と目を合わせずに星夜は彼の斜め前の位置に腰を降ろした。無言の二人を前にした晴が溜息混じりに呟く。

『星夜と海斗はどうしたんだ? 険悪なムードだけど喧嘩でもした?』
『俺は喧嘩とは思ってないけどさー。なぁ、悠真。夕食が終わってから皆に話があるんだ』
『飯を食べながらだと飯がまずくなる話?』

 キッチンにいた悠真が顔を覗かせた。さすがに悠真は察しがいい。
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