【Quintet】
『……結婚すればいいじゃねぇか。沙羅と結婚すればUN-SWAYED抜けないで済むんだろ。さっさと結婚しちまえよ』

 それまで黙っていた海斗が顔を伏せたまま呟いた。星夜は苦笑いして海斗に視線を向ける。

『海斗、お前が言うなよ。沙羅と結婚した俺とは一緒に歌えないだろ。俺はUN-SWAYEDの音楽を壊したくないんだよ』
『……お前はいつもそうだ。いつも自分から貧乏くじ引いて犠牲になろうとする。純夜がいなくなった時だって最初からろくに捜しもしないで、すべて諦めた顔してお前は笑ってた。……ふざけんなよ』

立ち上がった海斗が星夜に掴みかかる。胸ぐらを掴んで立ち上がらせた星夜に海斗は声を荒くして詰め寄った。

『なんでいつも自分が楽になる道を選ばない? 沙羅と結婚してバンド続ければいいじゃねぇかっ! それがお前が幸せになれる道じゃないのかよ。……星夜っ!』

 泣きそうな顔をした沙羅が二人の間に割って入ろうとするのを晴が引き留める。悠真も視線で沙羅に制止を呼び掛けた。

 本当は悠真も晴も叫びたかった。けれど星夜の気持ちを考えると動けない。
だからこんな時は海斗に託す。今の海斗は悠真と晴の代弁者でもあるから。

『俺達に遠慮するなよ。欲しいもの全部手に入れればいいじゃん。それで星夜が幸せになれるなら俺は……』
『仲間を裏切ってまで手に入れた偽りの幸せなんか俺はいらない。俺はお前らが大事なんだ。海斗の書く詞が好きだ。海斗の歌声が好きだ。悠真の創る曲もギターも晴のドラムも、俺達四人が創るUN-SWAYEDの音楽が好きなんだ。俺達の音楽が乱れることはしたくない』

あくまでも冷静に切り返す星夜も泣きそうな顔だった。
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