【Quintet】
 廊下の方で襖《ふすま》が開く音がする。

『兄貴、沙羅が……』
『和室だ。美琴さんに会いに行ったんだろ。戻ってくるまでそっとしておこう』
『俺の家で親父と話してる時の沙羅も、今の電話の時みたいだった。お祖父さんの名前出た途端にすっげー冷めた目してたよ』
『沙羅にとって葉山家はいい思い出のある家ではないんだろうな』

沙羅と祖父の間にどんな因縁があるか四人は知らない。沙羅の幼少期を知る悠真と海斗もその辺りの事情は聞かされていない。

 再び襖の開く音とスリッパの足音が近付く音がして、沙羅がリビングに帰って来た。

「今週の日曜日、お祖父さんが私と星夜に話があるから葉山本家に来てくれって」
『婚約のことだな』
「うん。約束は日曜日の15時。お仕事の方、大丈夫?」

沙羅に尋ねられた星夜は悠真を見る。悠真は携帯電話に登録してあるスケジュール欄を確認して頷いた。

『日曜は26日だよな。星夜の仕事を昼に終わるように調整する』
『やっぱりリーダーは頼りになるねぇ。沙羅、大丈夫だよ。間に合うようにマッハで仕事終わらせて来るね』
「ありがとね。ごめん、先に部屋に戻るね」

まだ強張った表情の沙羅の無理やり作った笑顔が痛々しい。沙羅が部屋に戻ったことで今夜の話し合いも強制的に終了になった。
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