二人で紡ぐLOVE STORY
再度駅まで戻る、臣吾。

臣吾はとても満たされたような、穏やかな気持ちになっていた。
こんなに楽しく話をしたり、幸せな気持ちになったのは久しぶりだ。

実は花瑛とは今、ギクシャクしていて同棲中の家に帰るのが億劫になっていたからだ。

いつからか、花瑛の気持ちが自分から離れているのを感じていた臣吾。

臣吾は尽くし系で、恋人がいる時はその彼女しか見れなくなるくらい盲目になる。
だから、少し重い愛し方をしてしまう。

だからこそ、元カノ達や花瑛の心が離れているのを自然と感じ取りやすいのだ。

それでも、花瑛の心を引き戻そうと思えなくなってきたのは、間違いなく“睦月の存在”だ。

睦月に心が惹かれているのは、最近感じている。

でもまだ、はっきりと認識出来ない。

花瑛への気持ちも全くなくなったわけではないし、睦月への気持ちが“好意”なのか“愛情”なのかがまだわからない。

「はぁ…」

思わずため息をついた、臣吾。

でも、睦月ちゃん“好きな人がいる”って言ってたもんな……
例え、この気持ちが“愛情”だとしても、きっと睦月ちゃんは手に入らない。

「誰なんだろ…好きな人……」

臣吾はポツリと呟き、空を見上げた。


〜♪
臣吾のスマホから通知音がする。

確認すると、花瑛からメッセージが入ってきていた。
【今日、実家に泊まるね】

「………」
瞬間的に“幼なじみと泊まるんだ”と思った、臣吾。

【わかった】

あぁ…もう、花瑛の中に僕はいない。

でもなぜか、苦しくない。

そして頭の中に、先程の睦月が浮かんだ。

嬉しそうに笑う笑顔。
顔を赤くにして、はにかむ表情。
少し興奮気味に、パン作りの話をする姿。
微笑みながら、小さく手を振る仕草。

「まいったな……」



睦月への気持ちが“好意”なのか“愛情”なのかがまだわからない?

もうとっくに気づいているじゃないか。


僕は、睦月ちゃんに惚れている―――――――


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