神殺しのクロノスタシス2
この瞬間に起きたことを、順番に説明するのは難しい。

順を追って説明するとしたら。

まず、暗殺者が毒針を刺そうと、素早く動いた。

青年はそれをするりと避け、そこに僕が割って入り。

暗殺者の指を、毒針ごと刀で切り落とした。

そして、そこに青年の魔導師が、真っ黒な魔導書を手に、何かを呟き。

先程月読と名乗った女性が現れ。

次の瞬間には、暗殺者は真っ黒焦げの炭になっていた。

「…はぁっ…はぁ…」

咄嗟の、付け焼き刃の連携だったが。

何とか、上手く行った。

と、言うか。

「何…?その魔導書…」

「…」

青年は、ちらりとこちらを見た。

あ、聞いちゃ不味かったか?

「ごめん。隠してるなら別に」

「『死火』。聞いたことがあるか?」

「…」

…普通に答えてくれた。

『死火』。『死火』か…。

聞いたことはあるが…。

「神を殺す魔導書…とか言う、伝説のあれ?」

「それだ」

成程。

「神…殺せてないけど」

神の代わりに、可愛い女の子連れてるだけじゃん。

「神を殺せるなど、あれはただの伝説でしかない。これが本物だ」

「やっぱり、そうなんだ」

「そして俺が、その『死火』の守人をしている。無闇・キノファだ」

「あ、自己紹介どうも…。令月です…」

「そうか。さっきの連携、助かった」

「こちらこそ」

迂闊に間に入ってたら、僕まで炭にされるところだった。

『死火』の守人、恐るべし。
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