神殺しのクロノスタシス2
急いで駆け付けた、二階右棟。

そこでは、既に戦闘が行われていた。

僕は気配を隠し、様子を確認した。

「…お前が、『アメノミコト』の暗殺者か」

体格の良い青年が、『アメノミコト』の暗殺者と対峙していた。

あの青年、使ってる魔法は何だ?

見たところ、際立った魔法の使い手には見えないが…。

「裏切り者を追って、異国までやって来るとはな。それも、このイーニシュフェルト魔導学院に。命知らずなことだ」

「…」

相変わらず、暗殺者は何も答えない。

代わりに、

「…っ」

思わず、声が出そうになった。

暗殺者は、ほんの僅かな動きで、指の先に針を忍ばせた。

同じ訓練された僕だからこそ、それに気づけた。

あの針には、強力な毒が塗られている。

一度刺されれば、解毒は不可能。

刺されて10秒も苦悶すれば、あの世行きだ。

それくらい高度で、高濃度な毒魔法。

あの青年は気づけただろうか?いや、多分気づいてない。

不味い。

毒針に刺される前に、加勢を…。

僕が動こうとした、そのとき。

「しーっ、駄目だよ」

「!?」

僕の背後に、うら若い女性が立っていた。

人間じゃないと、本能で分かった。

「私、月読っていうの。あの子の味方。協力してくれるよね?」

…この際、敵でないなら何でも信用してやる。

「…毒針に刺されたら終わる」

「りょーかい。上手く合わせてね」

そう言うなり、彼女はスーッと消えた。

僕は刀を構えて、気配を消した。

先に動いたのは、暗殺者だった。

僕はその指先に向けて、抜刀した。
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