国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
パーティー後のルディシアでのこと――

アレクサンドロスは、帰国した後も怒りが収まらずにいた。

「クソっ……なんのためにセレンテーゼに行ったと思ってるんだ! 馬鹿にしやがって!!」 

近くにあったグラスを床に投げつけると、ガシャンと音をたてながら粉々に割れて散らばった。
その音が響き渡っても、部屋に使用人が誰一人入ってこない。

誰も王子の面倒をみようとしない。
もはや王子としての立場が危うくなっているのだった。

(皆、立場が危うくなると離れていった……ニーナを追放した時には、あんなに擦り寄ってきたのに!)

誰もアレクサンドロスに近づこうとしない。
そのことが余計に彼を苛立たせた。

(ニーナを取り戻せたら全て元に戻るはずだったのに!)

大賢者の横でニコニコと笑うニーナを思い出すと、腸が煮えくり返りそうだ。

「ちくしょうっ……!」

アレクサンドロスが二本目のグラスに手をかけた時、扉がノックされた。

「殿下、入ってもよろしいでしょうか」

声の主は大司教だ。
アレクサンドロスはテーブルにグラスを荒々しく戻すと、「入れ」と声をかけた。

「セレンテーゼ帝国からお帰りだと伺いましたが……随分と荒れていますね」

大司教は床に落ちたグラスを一瞥すると、困ったように笑っていた。


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