国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「ルティシアを手に入れるおつもりですか?」

気がついたらそんな言葉が口から出ていた。

フェルディナンドとマーティスが目を丸くしている。
皇帝は口角を片方だけ上げた。

「お前はどう思う?」
「どうでしょう……地理的には手に入れるべき地ではあると思います。ですが今のルティシアを無理矢理手に入れても、負債になってしまうかもしれませんね。その理由は……もちろん皇帝陛下はご存じでしょう」

ニーナの答えに、皇帝は面白そうに喉を鳴らした。

「ルティシアは実に愚かだな! このように聡明な者を手放してしまったのだから」

どうやら皇帝にはニーナの意図が通じたようだ。

(ルティシアの国には未練はないわ。だけど、そこに暮らす人々に罪はないもの。争いに巻き込ませたくない)

武力によって手に入れても価値はない、と暗に示したのだ。

「やはり元聖女には褒美を授けよう」
「え?」

皇帝の言葉にニーナは間の抜けた声を出した。けれど今度はすぐには断らなかった。

ひとつ、願いを思いついたからだ。

「では僭越ながら、一つだけ願い事を聞いていただけますか?」


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