俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
「ただ。幼稚園の帰りに里穂が河原を転げ落ちて近所中大騒ぎになった時とか、お父さんが亡くなられて店を引き継ぐと決めた時。里穂のそばにいてやりたかった」

里穂は顔を上げ、蒼真を見つめた。

蒼真の言葉の意味がよくわからない。

「蒼真さん? それは、あの」

戸惑う里穂に、蒼真は優しく微笑み軽く肩を竦めた。

「普通とは違うにしても、縁があって結婚したんだ。妻のことを知りたい。そう思ってるんだよ」

蒼真の手が里穂の頰を優しく撫でる。あまりにも丁寧で慎重すぎるその動きに、里穂の心がざわざわしている。
もっと強く触れてほしい。
ふと浮かんだ思いに、さらに心が揺れる。

「私も。私も蒼真さんのことが、知りたいです」

頰に触れる蒼真の手に自身の手を重ね、里穂は迷いのない声でそう答えた。

「なにが知りたい?」

蒼真は軽く首をかしげ、柔らかな笑みを浮かべた。

「だったら、あの……好きな食べ物は」

とっさに口を突いて出た里穂の言葉に、蒼真は束の間黙り込み、そして肩を揺らし笑い声をあげた。

「あ、やだ」

里穂は間の抜けた質問をしてしまったと気づき、顔を熱くした。蒼真の好物ならとっくに知っている。

「好きな食べ物は里穂の料理。とくに豚汁は絶品」

笑い声の合間に聞こえる蒼真の言葉に、里穂は気まずげにうなずいた。

「ですよね。よく知ってます。……今晩は豚汁にします」

「その前に」
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