俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
「お、お前たち、なにを見てるんだ」

里穂もつられて見てみると、店内のあちこちから好奇に満ちた視線を向けられているのに気づいた。

蒼真の言うとおり、杏華堂の社員のようだ。

「うそ」

里穂は息をのみ両手を口に当てた。

今のやり取りを見られていたはずだ。

お金のために蒼真と結婚したなどというあり得ない疑いを晴らしたくて、つい蒼真を愛していると言ってしまったが、それも聞かれたのだろうか。

里穂はあまりの恥ずかしさに目眩を覚えた。

「常務、今後見合いの話は結構です。麗美さんにもそうお伝え下さい」

冷静に言葉を重ねる蒼真を苦々しげに睨み付けると、男性は「ふんっ。俺は認めないぞ」と言い捨て、荒々しい足取りで店を出て行った。

「悪い。もうわかってるとは思うが、今のが常務だ」

蒼真は里穂を席に座らせ、自身も向かいの席に腰を下ろした。

「やっぱりそうですよね。麗美さんの名前が出たのでピンときました」

そして予想以上の押しの強さや身勝手な言葉がいつまでも続くのには驚いた。

「麗美さんのことは常務にきつく釘を刺しておくから大丈夫だ。それに」

蒼真はテーブルに両肘を乗せ頬杖を突くと、優しい笑みを浮かべた。

「里穂があれだけハッキリと俺を愛していると言ってくれたから、これ以上見合いの話を押しつけることはないと思う」

「それは、あの」

あまりの照れくささに言葉を詰まらせる。
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