俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
「ここはうちの社員の昼の定番の店。本社に食堂はあるが、かなり混むんだ」

「定番……」

里穂はチラチラ向けられる視線から隠れるように、身体を小さくした。

常務に言い放った言葉が次々と頭に浮かんできて、あまりの恥ずかしさに思わず声が漏れそうになる。

「常務にあれだけハッキリ言ってくれて、社員たちもスッキリしていると思うが、これ以上楽しませることもないな」

蒼真は満ち足りた声でそう言うと、伝票を手にゆっくりと立ち上がった。

「とりあえず、ここを出ようか」

「はいっ」

里穂は待ちかねたように答えると、蒼真が差し出した手を反射的に摑んで勢いよく立ち上がった。

「きゃっ」

足に力が入らない。

立ち上がろうとした途端身体が大きく揺れて、蒼真の胸に勢いよく飛びこんでしまった。

常務に毅然とした態度を崩さなかったとはいえ、やはり緊張していたようだ。

「すみません」

慌てて離れようとするも、足元がふらついて思うように動けない。

蒼真の身体にしがみついたまま、あわあわと焦るばかりだ。

「落ち着け。このまま俺にしがみついていればいい」

柔らかな声におずおずと顔を上げると、まるでこの状況を楽しんでいるような蒼真と目が合った。

「俺がそばにいるから大丈夫だ。安心しろ」

「はい」

背中に蒼真の手の温もりを感じながら、里穂はうなずいた。

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