俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
それも時期がくれば離婚の可能性もある彼女に手を出すつもりはもともとなく、頼み込んだ時ももちろんそのつもりだったのだが。

「失敗したな」

里穂の額にかかる髪を指先で梳きながら、蒼真は苦笑する。

素直で真面目、誠実な人柄の里穂は、自身の生き方は世の中の常識だとばかりに人を疑うことを知らないようだ。

ひとつのベッドをふたりで使うことに初日はかなり緊張していたが、手は出さないという蒼真の言葉に即反応し、次第に落ち着きを取り戻していった。

蒼真の言葉をすんなり信用し、今ではふたりで眠ることに緊張も抵抗もなさそうだ。

「単純というか、素直すぎるというか」

蒼真は昼間の社長室での出来事を思い出し、目を細めた。

HPの写真を見た常務が社長室に飛び込んできたのは、そろそろ里穂と待ち合わせているカフェに向かおうとしていた頃。

来週実施される工場案内の件でたまたま社長室にいた蒼真の顔を見るや否や、常務は写真について問い質し、蒼真が里穂と結婚したと聞かされた途端、頭に血を上らせ怒り狂った。

その反応は想定内のことで、さして驚くでもなく常務の激高が収まるのを待つことにした。

相手にしなければ五分程度でひとまず落ち着くはずだ。

その時、蒼真の腕時計に里穂からメッセージが届いた。

【蒼真さんに教えてもらったカフェに着きました。待ってますね】

約束の時間より早めに着いたようだ。

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