俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
雫の上司というだけでなく恭太郞の親友ということで常連客から気安く声をかけられるようになり、二カ月が過ぎた今ではすっかり店に馴染んでいる。

「いらっしゃいませ」

週末、里穂は仕事帰りにひとりで店に顔を見せた桐生にカウンター越しに声をかけた。

「今日はたけのこご飯を用意してますけど、いかがですか?」

「春って感じですね。入口のメニューに鰆の甘酢あん定食ってあったけど、それにたけのこご飯って」

「はい一緒にご用意できますよ」

里穂の答えに、桐生は目尻を下げた。

「すぐにお持ちしますね」
 
最近、里穂は桐生の食の好みがわかってきた。

好き嫌いはなく出された料理はなんでも食べるが、濃い味付けは苦手で出汁をきかせたあっさりとした料理の方が箸が進む。

肉と魚なら魚を選び、野菜は調味料不要で素材の味をそのまま楽しむことが多い。

近では里穂なりに桐生の好物を察し、用意する機会も増えてきた。

毎回おいしそうにペロリと平らげてくれるのでつくりがいがあり、最近では雫や母と一緒に新しいメニューを考える時に、桐生の反応を想像してしまうこともある。 

「ビールかなにか飲まれますか?」
 
カウンター席に腰を下ろした桐生に、里穂は問いかけた。

「いや、今日はやめておきます。実はこの後最終の新幹線で大(おお)阪(さか)に行くので」

「お仕事ですか?」

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