俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
脚にハンディを抱えている母の佳也子が長時間店に立つのは難しいが、調子がいい時にはわずかな時間だが手伝ってくれるのだ。

父が亡くなってすぐ、佳也子は酒酔い運転の車にはねられて大けがをし、今も足に後遺症が残り、頰にも大きな傷痕がある。

一年前の佳也子は、足の後遺症と傷痕を気にして外に出られず、店にも立てなかった。

けれど佳也子を気にかけ店に通ってくれる常連たちの優しさと、傷痕を隠すメイクを知ったおかげで見違えるように明るくなった。

最近では町内会のカラオケ同好会にも顔を出すようになり、歌の練習に余念がない。

桐生が初めて店に来た日も、同好会の集まりだと言っていそいそと近所のカラオケに出かけていた。


「おまたせしました。鰆の甘酢あん定食です。ごゆっくりどうぞ。あ、でも新幹線の時間があるならゆっくりしていられませんね」
 
里穂は思い出し、料理を並べた木製のトレイを手早く桐生の手元に置いた。

「時間は大丈夫ですよ。天気も問題なさそうだから遅れる心配もなさそうだし」

桐生はそう言いながら、早速箸を手に取り食事を始めた。

「ゴルフも結婚式も晴れそうでよかったですね」

「天気なら恭太郞が晴れ男だから心配してません。恭太郞と笹原の結婚式も、天気だけは心配いりませんよ」

「恭太郞君と雫の結婚式?」

< 16 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop