俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
それは杏華堂の創立十年の時の記念誌で、今日の研修で必要なのにもかかわらず家に忘れてしまい、里穂に届けてくれないかと連絡を寄越したのだ。

今日は周辺の水道設備の工事による断水が予定されていて、店は臨時休業。タイミングもよかった。

「お姉ちゃん、出かける予定とかなかった? ごめんね」

里穂にとっては滅多にない貴重な休みだ、雫はしゅんとうなだれている。

「予定なんてないから気にしなくていいわよ。母さんは朝からカラオケに行ったし、時間を持て余してたくらいだからちょうどよかった」
 
日曜日以外店を開いているので友人と出かける機会は滅多になく、今日のように突然時間ができても誘える相手はほぼいない。

「せっかくだから、勉強がてらおいしい物でも食べて帰ろうかな。この辺りにお勧めのお店ってある?」 

「だったら一本裏に入った通りにおいしいパスタ料理のお店があるけど」

雫はそう言いつつ、がっくり肩を落とした。

「私も一緒に行ければいいんだけど、研修中は難しくて……付き合えなくてごめんね」

目の前で両手を合わせて謝る雫に、里穂は苦笑する。

「気にしすぎよ。私なら適当に楽しんで帰るし、研修中なら早く戻りなさい」
「う、うん、ごめんね」 
 
よほど急いでいるのか、雫は何度も振り返りながらも足早にビルの中に戻って行った。

「気にしなくていいのに」
 
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