俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
店内にはすでに十人ほどが席に着いていて、若い女性が子どもを膝に乗せて絵本を読み聞かせている姿も見える。 

「足の調子はどう? 大丈夫?」

里穂は椅子に腰を下ろした佳也子に声をかけた。

「平気。リハビリを頑張ったから、ばっちりよ」

朗らかに笑う佳也子に、里穂は優しく微笑んだ。

佳也子は交通事故の後遺症で今も軽く足を引きずるが、定期的に通っているリハビリのおかげでかなり改善し、日常生活に困ることなく過ごせている。

今日も電車を乗り継ぎ三十分をかけて、しっかり歩いてやってきた。

その姿はとても力強く、事故に遭った時には考えられなかった回復ぶりには里穂も雫も驚いている。

けれどそれにはちゃんとした理由がある。

それはこの講習会だ。
事故で負った顔の傷が気になり外出できなくなった佳也子に、担当医が半ば強引に勧め、参加させたのだ。

その日杏から顔の傷はメイクでカバーできると教えられ、佳也子の心はあっという間に解放された。

顔の傷痕が、メイクで目立たなくなる。

結果的にそのことがきっかけで外出する機会が増え、それまでなかなか行けずにいたリハビリにも通えるようになった。

リハビリを続ければ続けるほど足の回復も進み、医師が期待していた以上に歩けるようにもなった。

気持ちを前向きにしただけでなく、足の回復にも寄与したメイクの力。

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