俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
佳也子が笑顔と生きる気力を取り戻したおかげで家族三人、今も幸せな毎日を送れているのだ。
それがきっかけで雫は杏華堂に興味を持ち、採用試験を受けたはずだ。
とはいえいざ内定を得た時には店を手伝いたいから辞退すると言いだして大騒動になったが。
「メイクの力は確かにあったかもしれませんが」
蒼真は里穂を見下ろし、口を開いた。
「メイクは単なるきっかけで、メイクが人を変えるわけではありません。結局、お母さん自身が前向きに頑張ったから、今日もうちの母親たちと食事に出かけられるほど、回復できたと思いますよ」
「それはそうかもしれませんが」
里穂は首を横に振った。
途端に前から歩いてきた学生たちとぶつかりそうになり、慌てて脇によけた。
「日曜日だから、混んでますね」
「そうですね……あっ」
人混みの中、蒼真に腕を摑まれ引き寄せられた。
「すみません。何度もぶつかりそうになっているので見ていられなくて」
からかい交じりの声でそう言うと、蒼真は腕を摑んでいた手をいったん離し、そのまま手をつないだ。
「あの」
続く思いがけない流れに、里穂は一瞬で顔が熱くなるのを感じた。
心臓の動きも速い。
二十九歳にもなって情けないと思うものの、恋愛経験ゼロの自分は男性と手をつなぐことすら初めてで、どれほど情けなくてもそれを受け止めるしかない。
それがきっかけで雫は杏華堂に興味を持ち、採用試験を受けたはずだ。
とはいえいざ内定を得た時には店を手伝いたいから辞退すると言いだして大騒動になったが。
「メイクの力は確かにあったかもしれませんが」
蒼真は里穂を見下ろし、口を開いた。
「メイクは単なるきっかけで、メイクが人を変えるわけではありません。結局、お母さん自身が前向きに頑張ったから、今日もうちの母親たちと食事に出かけられるほど、回復できたと思いますよ」
「それはそうかもしれませんが」
里穂は首を横に振った。
途端に前から歩いてきた学生たちとぶつかりそうになり、慌てて脇によけた。
「日曜日だから、混んでますね」
「そうですね……あっ」
人混みの中、蒼真に腕を摑まれ引き寄せられた。
「すみません。何度もぶつかりそうになっているので見ていられなくて」
からかい交じりの声でそう言うと、蒼真は腕を摑んでいた手をいったん離し、そのまま手をつないだ。
「あの」
続く思いがけない流れに、里穂は一瞬で顔が熱くなるのを感じた。
心臓の動きも速い。
二十九歳にもなって情けないと思うものの、恋愛経験ゼロの自分は男性と手をつなぐことすら初めてで、どれほど情けなくてもそれを受け止めるしかない。