俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
「ゆっくり見るのは何年ぶりかな。迫力だな……」

里穂の混乱など気づく様子もなく、蒼真は川沿いに続く満開の桜を見上げ、感嘆の声をあげている。

手をつなぐ程度のこと、蒼真には大したことではなさそうだ。

「本当に、綺麗ですね」

つないだ手が気になるが、里穂にとっても何年かぶりの花見だ。

せっかくだから楽しもうと、気持ちを落ち着ける。

「子どもの頃、桜を見に家族でよくここに来たんです」

里穂は目を細め、当時を思い出す。

川沿いに咲く何百本もの桜の美しさは圧巻で、わざわざ来てでも見る価値がある。

父はこの季節が来るのを心待ちにしていた。

「寄って下さって、ありがとうございます」

講習会が終わったあと、杏の呼びかけで参加者全員で食事に行くことになったのだが、里穂は店の仕込みがあるので遠慮した。

すると話を聞いていた蒼真が車で送ると声をかけてくれ、ささはらに向かって車を走らせていたのだが。

途中、子どもの頃毎年訪れていた桜並木を見つけて声をあげた里穂のために、蒼真は車をパーキングに止め、こうして花見に付き合ってくれているのだ。

忙しい中申し訳ないと思いつつも桜の美しさには抗えず、つい蒼真の優しさに甘えてしまった。

日曜日の夕方、大勢の人が桜を楽しんでいる。

満開を過ぎて葉桜に近い木もあるが、それはそれで風情がある。

「あ、八重桜」

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