俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
「メイクって人を強くしますよね。悲しくても疲れていても、メイクひとつで気持ちが前向きになれるし頑張れることも多いし。だから、蒼真さんのお仕事ってとても素敵なお仕事だと思います。いつもパワフルな杏さんから元気をもらってますし、母の付き添いと言いながら、私の方が講習会を楽しみにしてるんです」

講習会間近になると、店のことで忙しい合間、睡眠時間を削ってでもピアノの練習をするほどだ。

「単なる付き添いじゃないと思うが」

里穂の言葉に静かに耳を傾けていた蒼真が、ゆっくりと口を開いた。

「会場を和ませるためにピアノを弾いてくれて、今日みたいに子どもがいる時は面倒をみてくれると母から聞きました。スタッフのひとりだと言ってもいいと思いますよ」

「それは大袈裟です。自分にできることをしているだけで、スタッフなんてとんでもない」

里穂は恐縮し、胸の前で手をパタパタと振る。

「そういえば、花音ちゃんも喜んでいましたね」

蒼真が思い出したようにつぶやいた。

「そうなんです。次に弾いてほしい曲もリクエストされました」 

帰り際、母親と手をつないだ花音からリクエストされたのは、今幼稚園で大人気だというアニメの主題歌だった。

「次までに練習しておきます」

花音のまん丸のかわいらしい瞳を思い返しながら、里穂は口元を緩ませた。

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