俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
「それに、花音ちゃんのお母さん、笑顔でしたね。ホッとしました」

杏に施されたメイクのおかげで顔の傷痕は隠れ、目の下のクマも、見えなくなっていた。

なにより彼女の目にはそれまでなかった光が宿り、力強い眼差しを花音に向けていた。

その姿は初めてメディカルメイクを経験した時の佳也子とよく似ていた。

「だから、しつこいようですけど。杏華堂は、我が家にとっては救いの神様のようなものなんです」

「確かにしつこい」

蒼真は呆れた声でそう言って肩を竦める。

「なんと言われても、このことは譲れません。母のことだけじゃなくて、雫も杏華堂に入社したおかげで恭太郞君と会えたし。ああ見えて実は雫も恭太郞君にべた惚れなんです。多感な時期に父が亡くなって、母が事故に遭って。一時期は学校にも行けなくなったんです」
 
立ち直る最初のきっかけは、メディカルメイクによって前向きに変化した佳也子の姿。

そして杏華堂に入社し、恭太郞と付き合い始めたことで、雫は完全に立ち直った。

「大切な人がいなくなるのは耐えられない。恋人なんて絶対にいらないって言っていたんです。でも、恭太郞君の明るさというか、強引さと言うか――」

「脳天気でやたら人懐こい面倒くささとか?」


里穂の言葉を引き取って、蒼真が笑いを堪えながら続けた。

「それは……あ、私がこんなことを言ってること、雫には内緒にしておいて下さい」

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