俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
つい口を滑らせてしまい、里穂は慌てた。

雫が知ったら全力で怒られそうだ。

「とにかく、桐生さんにその意識はなくても、我が家にとって杏華堂は救いの神様なんです」

もしも杏華堂が存在しなければ、そしてメディカルメイクが開発されていなければ。

里穂たち家族は今頃どうなっていたのか、想像するだけで切なくなる。

「だから、私にできることがあればおっしゃって下さい。もちろん講習会のお手伝いは続けます。ほかにもお役に立てることがあれば、協力させて下さい」

「協力か」

蒼真のつぶやきが耳に届いたと同時に、つながれた手に、ぎゅっと力がこもった。

「だったら、協力してもらいたいことがあるんですが」

「はい、是非」

里穂は目を輝かせ、蒼真に向き合った。

大した力になれるとは思えないが、蒼真や杏華堂の役に立てるなら、なんでも引き受けるつもりだ。

すると蒼真は姿勢を正し、ゆっくりと口を開いた。

「俺と結婚してほしい」

里穂はこれは夢なのかとぽかんとし、目を瞬かせた。

「結婚、ですか……」






蒼真から詳しい説明を受けても、里穂は現実離れした話に混乱していた。

桜並木を離れて蒼真に連れてこられたのは、杏華堂の本社から近いイタリア料理店。

オフィス街にあるからか、日曜日の今日は客足も少なく個室にスムーズに案内された。

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