僕の瞳にだけ映るきみ

2

そのバーはしばらくまっすぐ桜並木を歩いてからやっと見えた古びた感じのビルの最上階にあった。最上階とはいっても、小さいビルだから3階なのだけれど。外壁には植物のツタのような緑が茂って覆っている。だけど不思議と怪しさはなく、レトロといった方が正しい。


もしこの桜並木を散策していたら、「ここら辺からはもうお店とかなさそうだよね」と言われて引き返す人が出始めそうなあたりをさらに1分ほどあるいた所にあった。これじゃお客さん入るのだろうか、なんて思いながら幅のせまい木の階段を上る。そして木製の枠組みにステンドグラスの小窓がついたドアを開けると、そこには小さな店が確かにあった。







間接照明は明るく照らすというより優しく包み込むように光っている。
テーブル席は3つ、カウンターは4席。





そして、店員さんは…









「こんばんは。落ち着く場所にどうぞ」









その瞬間だった。
俺は間違いなく恋に落ちた。








真っ白でつかめない位透明感のある肌。まるでその声ひとつでここにいてもいいよと伝えてくれているような穏やかで優しさが隠しきれない声。繊細な笑顔。そして、








透き通ったような飴色の瞳から、俺は目をそらせなかった。











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