エリートなあなた
フィールドは違えど、同じ試作部で働いているのだから、あまりの偶然に笑えてくる。
「――さて、本題に入らせて頂きますが…。
今回は私ではなく、担当の吉川からご説明した方が早いので、」
そこで話を止めた松岡さんの視線を感じて、切り替えた私は斜め向かいへと焦点を合わす。
こちらを見ていた彼と目が合い、わずかな動揺を小さい会釈で潜めてしまった。
「では恐れ入ります、私からご説明申し上げますのでお願いいたします。
…佐々木さん、今いちど確認頂きたい箇所がございます。
こちらの資料のお目通しよろしいでしょうか?」
「あ、はい。では拝見させて頂きます」
今までの打合せ履歴と問題点克服の改善書を提示すると、それを一言一句確かめるように見ている彼。
その眼差しは昔と何も変わっていなくて、妙な懐かしさを感じさせた。