エリートなあなた
小さな居酒屋で対峙する私たちへ店内の視線が集まっていたことは気づいていた。
それでも構う余裕は微塵もなくて、当事者の私さえ固唾を飲んで見守っていた。
「――彼女の過去も、…何もかもすべて受け止める。
だからこの場も俺に払わせて欲しい」
「っ、」
そう紡いだダークグレイの瞳は、剛史に対して鋭さを込めた眼差しを送っている。
今までプチ・パニックの心臓は、ドクンドクンと底から湧く嬉しさで鼓動が速まっていた。
――そんなことを言われたら、…修平さんとの“ずっと”を望んでしまうのに。
するとフッと先に破顔したのは剛史だった。私たちを交互に見る顔はとても穏やか。
「ホント真帆って食い意地張ってるから大変でした」
「あっ!また食い意地って言った…!」
「事実は事実として伝えるべきだろ」
そこでようやく傍らから小さな笑い声が届き、和やかな空気が瞬間に辺りを包んだ。