エリートなあなた
「ちょ、そんなに食べてないでしょ!」
「いーや!“理工学部のマドンナ”より、“理工学部の隠れ大食い”だろ!」
「ちょ、ちょっと…!」
冷たいビル風が頬を掠めていく中、寒さなどお構いなしの饒舌さには感服したい。
アルコールが彼のエンジンを加速させているのか、さすがに頭を抱えたくなるけれど。
「フッ、ありがとう――あとは真帆に聞くとするよ」
その時、肩をグッと引き寄せられると、ビジネスコート姿の黒岩課長の隣に立たされる。
「あ、それもそうですね」
携帯灰皿をバッグへとおさめた剛史は、その言葉に軽快に笑って修平さんを見た。
視線を送り合う彼らはまるで、無言の会話をしているようにも映った。
「――じゃあ真帆、今日はサンキュ」
「あ、剛史…今日のことは、」
「誰に言うんだよ?ていうか、オマエこそ瑞穂にバラすなよ!?」
「…ふふっ、もちろん――本当にありがとう!」
そして背を向けて歩き始めた彼に言葉をかけると、振り向くことなく手を上げてくれた。