エリートなあなた
駅を目指して歩いていく後ろ姿に、昔の面影はもうなくて。やっぱり別の場所で、日々に揉まれながら歩いているのだと感じた。
だから過去の私たちに、“またね”は必要ない。…次に会う約束なんて必要ないもの――
「帰ろうか、」
「あ、はいっ!」
頭上から聞こえた心地良い声に答えると、肩を寄せ合いながら歩いていく。
「さむいー…」
「今日コートはどうした?」
「うー、…晴れてて大丈夫かなって思って…」
SJ社のオフィスから少し離れ、車の往来が激しい夜の歩道を進む私たちに気づく人はいないだろう。
「風が弱くて天気が良いほど、放射冷却が起きるのに?」
「…実は、寝坊しかけて忘れたんです」
「ハハッ!真帆らしい」
もう少し腕の力を強められると、密着がより高まる。まるで心まであたたかくなった気分だ。