エリートなあなた
仕事用とつけ変えたブレスレットタイプの腕時計が示す時刻は、いつの間にか16時前。
急いで部屋を出ると、やっとマンションへ行ける――その逸る心でさらに忙しくなった。
胸に手を置いて平常心を保とうとしても、今の自分の状況がそれを阻んでしまうほどに。
そして荷物を携えて階段を下りたところ、一階に到着する前に待ち構えていた母と対面。
お願いしていた品が入った紙袋を手に、何やら薄気味悪い表情を浮かべている。
「――彼氏でしょ!?」――その顔の理由は、すぐに彼女自身が躊躇なく口にした。
「…なに、いきなり」
ズバッときり込む性格は相変わらず。仕方なくリビングへ向かうと、“10分”の約束でティータイムを了承した。
ダイニングテーブルに座った私の目の前には、ほど良く冷めたシフォンケーキと熱々のダージリン。向かいの席には、ニコニコしながらケーキを食べる母が。
「やっぱり彼氏が出来てたのねぇ!うん、まあ前からそんな気はちょーっとしてたんだけど。
大学生の時はあ~んなに出歩いて遊び回っていた子が、今の部署に移ってから暫くは仕事一直線で浮いた様子もなかったけど。
どーもここ最近は幸せオーラが飛んでるなぁって踏んでたのよ」
フォークを持つ手を動かしながら、そして口を動かしながら、推理ショーのごとく話は止まらない。