エリートなあなた
薔薇が好きな母の好みに彩られた室内は、やっぱり居心地が良いなと一瞥していると。
「ところでアナタたち、…ってまだ相手の方に会ってもないけど――結婚するつもりはあるの…?」
「…はぁ?」
前方から届いた大きな声は聞こえていたけれど、あえて分からないフリをしてしまう。
「だからね、け・っ・こ・ん、よ!
真帆はまだ若いといっても26歳になるし?そ~いう話が出てるのかなぁとね」
聞こえていなかったと判断されたのか、今度は捲し立てられるように一際リビングに響いた。
「そ、そんな話は、」
さすがに逃げられない、と諦める外なく。素直に何にも出ていないと、首を左右に振った。
「あらそうだったの…?
今はまだ仕事に打ち込んで楽しい時期だと思うけど、お付き合いしている人がこの人だ!って感じてるのなら、…今だから言わせて貰うわ。
――いずれ仕事と結婚で悩む時が必ず来るわよ?
あなたのように徹夜続きのとても忙しい仕事なら、なおさらのこと」
“ごめんね口出ししちゃって”と舌を出した母。それでも私には耳が痛い話であった。