エリートなあなた
再び座った彼女の隣席からバッグを手にし、いつまでも幼稚な自分を自嘲した。
「…それじゃあ絵美さん、今までお世話になりました」
「もう真帆ちゃんてば改まって、…恥ずかしいわよー!
もう会えなくなる訳じゃないんだしさぁ、また飲みに行こうよ。ねっ?」
「はい!ありがとうございます。お先に失礼します」
ちなみに昨日から専務は単独で本社出張中。そのため事前に、異動する旨とお礼は伝えてある。
気さくな専務はとても寂しがってくれたけれど。“期待しているよ”と今後に向けて、嬉しいエールを下さった。
ひとり乗り込んだエレベーターで一階下へ降り、電気の点いていた秘書課に立ち寄る。先輩たちに今までの感謝とお礼を告げて、その部屋もあとにした。
更衣室で制服から私服に着替えるのもこれが最後。感慨深くエレベーターへ乗り込んで地上を目指していると、帰宅ラッシュのため階ごとに人が増えていく機内。
奥の隅っこで定員スレスレの中、ジッと耐えていると。音を立て途中停止した8階で、見慣れた女性と対面してしまう。
「あら、」
「…、」
ぎゅうぎゅうの機内で遭遇した苦手な相手に困惑しつつ、ぺこりと小さく頭を下げた。