無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚～甘く豹変した旦那様に捕まりました～【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】

「答えろよ！」

　それでもなお、口を噤んでいると、歯を軋ませる音がかすかに聞こえた。
　
「……全部嘘だったのか？おまえの言葉も、態度も何もかも全部……」

　血を吐いているかのように苦しげな声だった。
　恐る恐る顔を上げると、真紘は悲痛そうに顔を歪めていた。
　改めて、己の罪深さを思い知る。

　好きだと言ってくれた真紘の優しい声。壊れ物のように大切にしながら触れてくれる優しい手。
　全部、由惟が裏切った。

　名前は偽っていても、心まで偽ったことはなかった。真紘にかけた言葉も、真紘に対する気持ちも何もかも本物だった。

　けれども、そう告げたところで白々しいだけだ。今更何を言っても、きっと真紘には伝わらない。

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

　ついに涙が堪えきれなくなった。
　滂沱として溢れる涙を拭いもせず、由惟はひたすら謝罪をした。それ以外、言うべき言葉は見つからなかった。