無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
「なにが婚約者だ!ふざけるな!この娘は一生この家にいて、私たちに一生尽くさなきゃいけないんだよ!」
「由惟にそんな義務はない」
「なにを……」

 ふつふつと怒りをたぎらせ、静子がゴルフクラブを突きつけた。振りかぶって殴られたら、頭蓋骨まで砕けてしまいそうだ。由惟は再び恐怖で息を呑んだ。

「この恩知らずが……親を亡くしたおまえを、誰が十年も養ってやったと思ってるんだ……それを、それを……よくもぉぉ!」

 顔を醜く歪めた静子が怒鳴り声と共に、ゴルフクラブを振り下ろした。やにわに突き飛ばされ、由惟は後ろに尻餅をつく。同時にガラスが割れる音が響き、床に窓ガラスの破片が散らばっているのが見えた。真紘は避けられたようで、怪我をしている様子はない。

 肩で息をしていた静子が再びゴルフクラブを振り上げようとしたその時、真紘は素早く静子に体当たりした。
 静子の体がベッドにぶつかり、崩れ落ちる。すかさず真紘が静子の手から落ちたゴルフクラブを部屋の隅に転がした。
 助かった。そう安堵していたところに、遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえてくる。

「由惟、もう大丈夫だ」

 真紘が近くに来てくれて、フワリと抱きしめられた。逞しい体躯に包まれ、この上ない安心感が押し寄せる。由惟はようやく正しく息が出来た気がした。
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