無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
「すみません、成澤先生。主人が失礼なことを申し上げて……」
「いえ。突然体が思うように動かなくなってしまいましたからね。ショックでそう思いたくなるのも無理はありません」

 田部の妻を安心させるように、いつもより丁寧な口調を心がけた。

「奥様も、手術に関して気になる点はありませんか?もしご主人の話を受けて疑問に思う点があれば、もう一度手術に説明をさせていただきます」
「いえ……手術の説明はとても丁寧にしていただきましたし、主人の後遺症は手術が原因でないことも理解しています」

 瞼を腫らした田部の妻が力なく微笑んだ。

「そうですか。もし今後も気になる点があれば気軽にご相談ください。それと、今の田部さんはご自身の衝動をコントロールできない状態にあります。何を言われてもあまり気にしすぎないでください」

 田部の妻に語りかけるようにして、その実、己にも言い聞かせているようだった。

 衝動的に思ってしまった言葉――普通なら理性が働いて表に出ない言葉が飛び出してしまっただけだ。一瞬魔が差して考えただけで、本意でないことの方が多い。真に受けるのは、精神衛生上良くない。

 俯くようにして頷いた田部の妻に、リハビリの進行状況を説明した上で、些細なことでも不安があればすぐに相談してほしいともう一度念押しして、真紘はその場を離れた。
 
 あと十五分ほどしたら病院の経営会議があり、そのあとは患者の治療方針を決める部内のカンファレンスがある。普段ならなんてことのないスケジュールだが、今日は気が重い。

 仕事は山ほどあったが残業する気にはならず、会議を終えた後はすぐに帰宅した。
 帰り際に航介から、

「成澤先生、俺は先生の結婚には反対ですからね。早いとこ目を覚まして、もっといい人と結婚してください」

 としつこく念を押されたが、それこそ余計なお世話なので無視しておいた。
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