無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
けれども報酬を貰う立場なのだから、みどりにはこまめに現状報告すべきだったかもしれない。由惟が密かに反省していると、みどりは気遣わしげな表情で由惟の顔を覗き込んだ。
「由惟さんは交通事故でご両親を亡くされてるのよね。お世話になってたご家族も親戚とかじゃないんでしょ?」
「そうですね。父の勤め先の社長さんで。父の幼なじみだったんです。私は他に身寄りがなかったので」
「随分苦労したのね。大変だったでしょう?」
「どうでしょう。言うほどじゃないですよ」
あの生活はなかなか悲惨だったが、露骨に気の毒がられるのはあまり好きじゃない。由惟は小さく首を傾げて、カフェラテをまた一口飲んだ。
「それに、みどりさんのおかげで今はこうして自立できましたから」
「助かってるのはむしろ私の方よ。由惟さんがいなかったらこのままお見合いは破談しなきゃいけなかったもの。ありがとう、由惟さん」
「いえ、そんな……」
「成澤くんとも仲良しみたいだし、由惟さんさえよかったら穂乃花の代わりにこのまま成澤くんと結婚する気はない?」
突然とんでもないことを言い出すみどりに、由惟は口の中のカフェラテを吹き出しそうになった。
「は、はい?」
なんとか飲み込んで、まじまじとみどりを見つめる。みどりは嫣然とした笑みを浮かべていて、冗談か本気か区別がつかない。
「……成澤さんとの縁談って、成澤さんに生田目病院を継いでもらうためのものなんですよね?」
「そうよ」
「だったら私が結婚しても意味ないじゃないですか」
穂乃花とは顔が似ているらしいというだけで、血の繋がりもない赤の他人だ。生田目病院となんら関わりのない由惟が真紘と結婚しても意味がない。真紘は、生田目病院の院長の座に就くこと以外、眼中にないのだから。
けれども、みどりは依然としてニコニコしている。
「由惟さんがうちの子になってくれたら万事解決よ」
「いやいや」
拾ってきた猫と同じ扱いはどうなんだろう。
そもそも「うちの子」なんて、生まれたての赤ちゃんならまだ手立てもあるのかもしれないが、由惟は成人している。いまさら誰かの家の子供になんてなれない。
「…………ちょっと、無理だと思います」
由惟が神妙に首を振ると、みどりは苦笑した。
「気が変わったらいつでも教えてね」
冗談だろうに、妙に引き伸ばすみどりを不思議に思いながら、由惟は笑って流しておいた。
「由惟さんは交通事故でご両親を亡くされてるのよね。お世話になってたご家族も親戚とかじゃないんでしょ?」
「そうですね。父の勤め先の社長さんで。父の幼なじみだったんです。私は他に身寄りがなかったので」
「随分苦労したのね。大変だったでしょう?」
「どうでしょう。言うほどじゃないですよ」
あの生活はなかなか悲惨だったが、露骨に気の毒がられるのはあまり好きじゃない。由惟は小さく首を傾げて、カフェラテをまた一口飲んだ。
「それに、みどりさんのおかげで今はこうして自立できましたから」
「助かってるのはむしろ私の方よ。由惟さんがいなかったらこのままお見合いは破談しなきゃいけなかったもの。ありがとう、由惟さん」
「いえ、そんな……」
「成澤くんとも仲良しみたいだし、由惟さんさえよかったら穂乃花の代わりにこのまま成澤くんと結婚する気はない?」
突然とんでもないことを言い出すみどりに、由惟は口の中のカフェラテを吹き出しそうになった。
「は、はい?」
なんとか飲み込んで、まじまじとみどりを見つめる。みどりは嫣然とした笑みを浮かべていて、冗談か本気か区別がつかない。
「……成澤さんとの縁談って、成澤さんに生田目病院を継いでもらうためのものなんですよね?」
「そうよ」
「だったら私が結婚しても意味ないじゃないですか」
穂乃花とは顔が似ているらしいというだけで、血の繋がりもない赤の他人だ。生田目病院となんら関わりのない由惟が真紘と結婚しても意味がない。真紘は、生田目病院の院長の座に就くこと以外、眼中にないのだから。
けれども、みどりは依然としてニコニコしている。
「由惟さんがうちの子になってくれたら万事解決よ」
「いやいや」
拾ってきた猫と同じ扱いはどうなんだろう。
そもそも「うちの子」なんて、生まれたての赤ちゃんならまだ手立てもあるのかもしれないが、由惟は成人している。いまさら誰かの家の子供になんてなれない。
「…………ちょっと、無理だと思います」
由惟が神妙に首を振ると、みどりは苦笑した。
「気が変わったらいつでも教えてね」
冗談だろうに、妙に引き伸ばすみどりを不思議に思いながら、由惟は笑って流しておいた。