早河シリーズ第五幕【揚羽蝶】
6月14日(Sun)午前7時
昨日は気持ちよく晴れていた東京も今朝は曇り空だった。梅雨の晴れ間は気紛れで長続きしてくれない。
香道なぎさはベッドの中で寝返りを打ち、白い天井を見上げた。まだ起き上がる気にはなれない。
せっかくの日曜日だ。部屋の掃除をして、溜まっているライターの仕事を片付けて、昼過ぎには渋谷に買い物に行きたい。
……そう考えてはいても、まだ身体はベッドに沈んでいる。
なぎさにとって、この1週間は長くハードな週だった。探偵事務所の案件で月曜日から神戸に泊まり、慣れない環境でこなした潜入調査の最中に確認できた自分の気持ち。
ベッドに寝そべって携帯電話のネットのニュース欄を眺める。明鏡大学准教授殺人事件、九州最大の暴力団、高瀬組の解体と組長の殺害……今週は時事ニュースの欄も芸能ニュースの欄も物騒で騒がしい。
なぎさが関わった女優の本庄玲夏の事件に関連したニュースを見ると気分が滅入った。
急に画面が暗転したかと思うと着信画面に切り替わった。
日曜の朝に電話をかけてくる図々しさが許されるのは親か友人か恋人の三択。親ならうんざりし、友人なら不思議に思い、恋人なら心踊るモーニングコール。
今回の着信相手は高校時代の友人、加藤麻衣子だった。
「……もしもーし。麻衣子?」
{なぎさ、おはよう。朝早くにごめんね。今って電話大丈夫?}
「うん。大丈夫。どうした?」
起き上がってベッドの上で膝を抱える。とうに目覚めていたが、さすがにまだパジャマ姿とは言えない。
{あのね、なぎさにお願いがあるんだけど……}
「……え?」
*
麻衣子との通話を終えたなぎさはすっかり覚めきった頭で先ほど眺めていたネットニュースの時事欄にある〈明鏡大学准教授殺人事件〉のニュース記事を読み漁った。
数分前まで好奇心程度にしか閲覧していなかった明鏡大学の事件の記事。まさかこんな形で、この事件と関わることになるとは。
「所長、起きてるかな……」
まだ8時にもなっていない。なぎさの上司である早河探偵事務所の所長、早河仁は朝が苦手な人だ。大きな仕事が一段落した今頃はまだ夢の中にいるかもしれない。
しかし事は一刻を争う。早河に連絡をするなら急いだ方がいい。
昨日は気持ちよく晴れていた東京も今朝は曇り空だった。梅雨の晴れ間は気紛れで長続きしてくれない。
香道なぎさはベッドの中で寝返りを打ち、白い天井を見上げた。まだ起き上がる気にはなれない。
せっかくの日曜日だ。部屋の掃除をして、溜まっているライターの仕事を片付けて、昼過ぎには渋谷に買い物に行きたい。
……そう考えてはいても、まだ身体はベッドに沈んでいる。
なぎさにとって、この1週間は長くハードな週だった。探偵事務所の案件で月曜日から神戸に泊まり、慣れない環境でこなした潜入調査の最中に確認できた自分の気持ち。
ベッドに寝そべって携帯電話のネットのニュース欄を眺める。明鏡大学准教授殺人事件、九州最大の暴力団、高瀬組の解体と組長の殺害……今週は時事ニュースの欄も芸能ニュースの欄も物騒で騒がしい。
なぎさが関わった女優の本庄玲夏の事件に関連したニュースを見ると気分が滅入った。
急に画面が暗転したかと思うと着信画面に切り替わった。
日曜の朝に電話をかけてくる図々しさが許されるのは親か友人か恋人の三択。親ならうんざりし、友人なら不思議に思い、恋人なら心踊るモーニングコール。
今回の着信相手は高校時代の友人、加藤麻衣子だった。
「……もしもーし。麻衣子?」
{なぎさ、おはよう。朝早くにごめんね。今って電話大丈夫?}
「うん。大丈夫。どうした?」
起き上がってベッドの上で膝を抱える。とうに目覚めていたが、さすがにまだパジャマ姿とは言えない。
{あのね、なぎさにお願いがあるんだけど……}
「……え?」
*
麻衣子との通話を終えたなぎさはすっかり覚めきった頭で先ほど眺めていたネットニュースの時事欄にある〈明鏡大学准教授殺人事件〉のニュース記事を読み漁った。
数分前まで好奇心程度にしか閲覧していなかった明鏡大学の事件の記事。まさかこんな形で、この事件と関わることになるとは。
「所長、起きてるかな……」
まだ8時にもなっていない。なぎさの上司である早河探偵事務所の所長、早河仁は朝が苦手な人だ。大きな仕事が一段落した今頃はまだ夢の中にいるかもしれない。
しかし事は一刻を争う。早河に連絡をするなら急いだ方がいい。