早河シリーズ第五幕【揚羽蝶】
渡辺亮、青木渡、佐々木里奈、沢井あかり。懐かしい名前が揃う中、彼はあることを思い出した。どうして今まで気付かなかったのか。
『美月に直接的な恨みがあるかはわかりませんが、美月をよく思っていなかった人間ならいます。……佐々木里奈。俺の元カノです』
『佐々木里奈……当時は啓徳大の4年生でしたね』
佐々木里奈の顔を早河は思い出せなかった。浅丘美月と彼女の叔母、加藤麻衣子、佐々木里奈、沢井あかり、女の関係者は五人いたが早河が聴取に立ち会ったのは、浅丘美月と彼女の叔父夫妻と木村隼人だけだ。
『里奈とはあの事件の後に別れたんです。俺が美月の側にいるために……。全部俺が悪いんですけど、別れる時もかなりゴネていて美月に対しても好意的ではありませんでした』
『佐々木さんとは現在の交流は?』
隼人はかぶりを振る。彼は疲労の色が見える顔を伏せた。
『別れてからは一度も連絡していません。大学を卒業してからは何度か、サークルのOB・OGの飲み会がありましたが、里奈は不参加でした』
『では佐々木さんが現在どうしているかはご存知ではないと?』
『内定をもらった就職先なら知っています。でも今もそこで働いているかは……』
『その就職先を教えてください。そこから佐々木さんを追っていけると思います』
隼人の承諾を得て、早河は佐々木里奈の内定先の企業をメモ用紙に書き留める。依頼料の説明を受けて契約書にサインをした隼人は早河を見据えた。
『あの……もうひとつ、依頼してもよろしいでしょうか?』
『内容によりますが、話はお聞きしますよ』
『……沢井あかりの現状を調べて欲しいんです』
3年前の雨の朝に見た彼女の顔が今も隼人の心の留め具に引っ掛かっている。
『沢井あかり……3年前の事件関係者のひとりですね。どうして彼女のことを?』
『沢井のことは俺の個人的な興味です。変な意味ではなく、3年前に彼女のことで気になることがあって』
『内容によってはお引き受けできないこともあります。ですが沢井さんの件には何か事情があるようですね?』
隼人がただの興味本位で頼んでいるのではないことはわかる。
木村隼人は3年前の事件の“何か”を掴んでいる。それは警察も掴んでいない何かだ。
『美月に直接的な恨みがあるかはわかりませんが、美月をよく思っていなかった人間ならいます。……佐々木里奈。俺の元カノです』
『佐々木里奈……当時は啓徳大の4年生でしたね』
佐々木里奈の顔を早河は思い出せなかった。浅丘美月と彼女の叔母、加藤麻衣子、佐々木里奈、沢井あかり、女の関係者は五人いたが早河が聴取に立ち会ったのは、浅丘美月と彼女の叔父夫妻と木村隼人だけだ。
『里奈とはあの事件の後に別れたんです。俺が美月の側にいるために……。全部俺が悪いんですけど、別れる時もかなりゴネていて美月に対しても好意的ではありませんでした』
『佐々木さんとは現在の交流は?』
隼人はかぶりを振る。彼は疲労の色が見える顔を伏せた。
『別れてからは一度も連絡していません。大学を卒業してからは何度か、サークルのOB・OGの飲み会がありましたが、里奈は不参加でした』
『では佐々木さんが現在どうしているかはご存知ではないと?』
『内定をもらった就職先なら知っています。でも今もそこで働いているかは……』
『その就職先を教えてください。そこから佐々木さんを追っていけると思います』
隼人の承諾を得て、早河は佐々木里奈の内定先の企業をメモ用紙に書き留める。依頼料の説明を受けて契約書にサインをした隼人は早河を見据えた。
『あの……もうひとつ、依頼してもよろしいでしょうか?』
『内容によりますが、話はお聞きしますよ』
『……沢井あかりの現状を調べて欲しいんです』
3年前の雨の朝に見た彼女の顔が今も隼人の心の留め具に引っ掛かっている。
『沢井あかり……3年前の事件関係者のひとりですね。どうして彼女のことを?』
『沢井のことは俺の個人的な興味です。変な意味ではなく、3年前に彼女のことで気になることがあって』
『内容によってはお引き受けできないこともあります。ですが沢井さんの件には何か事情があるようですね?』
隼人がただの興味本位で頼んでいるのではないことはわかる。
木村隼人は3年前の事件の“何か”を掴んでいる。それは警察も掴んでいない何かだ。