(一)この世界ごと愛したい
「わあ、この本初めて見た。」
「お嬢ちゃんは本に詳しいんだね。海を越えて入手した本で、言語が違うんだ。」
「うんうん。暗号みたいで楽しそう!読めるようになってみたいなー!」
「この言語を学ぶための本も揃えてるよ。」
小ぢんまりした小さな本屋の、奇策なおじさんが勧めてくれて。
私はもうこれでもかってくらい目を輝かせるものの、自分がお金を持ってないことを思い出す。
「…お金持って人連れてくるからちょっと待っててくれる?」
「ははっ、確かにお嬢ちゃんの可愛さだとその辺の男なら皆払ってくれそうだ。」
「じゃあ待っててね!」
とは言ったものの。
とりあえずもう少し探索したい私は他にも色々なお店を見てみる。
お花屋さん、洋服屋さん、果物屋さん。
みんなが当たり前に行けるようなお店も、ずっと城にいた私には新鮮で。新しい発見ばかりで胸が踊る。
「うー。少しくらいお金持ってたらなー。」
さっきのお団子美味しそうだった…。
それさえも買えない無一文の私。自分が情けなくて悲しくなる。
歩いていると、ある一点に目が止まる。
「…ハルだ。」
ハルがすっごい人に囲まれている。
そういえば来たことあるって言ってたもんな。ようやく目覚めた上に、次期国王になるハルはやっぱり有名人だ。
私は気付かれる前に、そっとその場を離れる。