(一)この世界ごと愛したい
べたーっと。
地面に頭をつけながら私に謝る店員さん。
うーん。何を謝られているんだろう。
「あのー?」
「大変失礼しましたー!!!」
「うん、大丈夫だよー。」
もう全力謝罪を続ける店員さん。
これじゃあいつまで経っても本が買えないなーと私は苦笑いを浮かべる。
「しかし…陛下亡き後、セザールへ嫁いだと聞いた時には身が引き裂かれる思いでした。よくご無事でっ…!!!」
「えー泣かないでよー。私買い物したいだけなんだけど。」
「次また姫様が狙われることがあれば必ずや!尽力いたします!!!」
…どうしたものか。
火龍の力を晒した以上、遠くない未来に必然的にそうなることが予想できる。
こんな平和な街で、こんな良い人たちに、危険なく幸せに暮らし続けてほしいと。
私の願いなんて、それだけなのに。
「…そんなことにはもうならないから。安心して?ねっ?」
「姫様…。」
「ハルも復活したし、私のことは何にも心配いらないよ。」
こんな人々を、守るために。
私はこの国を去ろうと決めたんだ。
「ずっと健やかに。この国で、幸せに暮らしててほしいなーと思ってる。」
「ああ、なんと勿体無いお言葉っ…!」
「だから泣かないでよー。」