(一)この世界ごと愛したい
修行、本。修行、本。
修行…いやいや、本も読みたい。あーけど修行もやっぱり怠りたくない。
「…ハルにリンの力の話を聞いたの。」
「えっ?」
本の誘惑に揺れる私に、ママが言った。
まさかハルが、私のいないところで話すなんて思わなかったので驚く。
「ハル、なんて言ったの…?」
「リンには特別な炎の力があって、それは天に愛された証だって。みんなにそう言ってたけど…。」
もうみんな知ってるのか。
しかも、天に愛された証って。そんなに良いものじゃないぞ。この厄介な龍。
「でも、私はそうは思えなくて。」
「…どうして?」
「リンを産んだとき、私はまさに生死の境にいて。とにかく熱い…。そんな熱に魘されたのを思い出したの。」
出産は命懸けとは聞いたことあるけど、そうか。私を産み落とすのにもそんな苦労があったのか。
ママには本当に頭が上がらないな。
「そしてようやくリンに会えた時の、パパの顔が頭にずっと残っていて。ハルの話を聞いて、その時にあの人が思ったことが少しだけ分かった気がしたの。」
この瞳は、火龍の力を持つ証。
御伽話のような伝説を受け継いできて、密かにそれを知っていたパパはどんな気持ちだったんだろう。
「あの人は、とても怯えてた。」
それはそうだろう。
災いとして。厄災として。
語り継がれてきた火龍伝説。
それが我が子にそれが宿るだなんて、そんな恐ろしいことはないよね。