(一)この世界ごと愛したい
「パパはね。私なんかよりもずっと戦を広い目で見る力がある。それなのにどうして敗れたんだろうって、ずっと考えてたの。」
「それは…リンをセザールへ渡さないために必死に守ったの。リンはこの国の希望だからって。」
私もそう思ってた。
娘を思う、親心だったんだろうって。
「…もう確認しようがないから憶測だけど。パパはたぶんあの日、セザールが攻めてくることがわかってたんだと思う。」
「そんな…考えすぎよ。」
「分かっていたから、私をこの城から遠ざけた。じゃなきゃ、パパがあんな王に負けたりしない。
パパの頭には私の中の火龍が過ったんだと思う。その力に多少なりとも魅せられたんじゃないかな。」
この力が忌々しい厄災だと言われる所以は、たぶんそれが原因なんだろう。
「国の命運も、自分の命も、全てを捨ててでも。パパは火龍の力を手放すわけにはいかなかった。それが私を守ることに繋がるだけで。」
「だから結局リンを守りたくて…。」
「私がパパの立場で考えて、本気で勝ちを取りたいと思ったなら、まず私を他の戦場へは行かせない。国に残らせて迎撃に当てるか、パパと合流して王都奪還に配置する。」
戦でこれほど大きく判断を誤ったパパを見たのは、これが初めてだろう。
「アレンデールが千年前に一度滅びかけたのは、そんな英断を鈍らせるほど火龍の力に魅せられたせいだよ。」
同じことを、繰り返さんと。
パパは気を張っていただろうに。そんな決意すら揺るがせるほど心を惑わす力なんだろう。
「だから私はここにいちゃだめなの。この力は人の心を壊していくからね。この国に良くないモノを惹きつけないために。」
「…リン。」
「だからごめんね。」
そう言うと、ママは目を伏せる。
アルもどこまで話を理解できているかは分からないけど、大人しく静かに聞いている。