(一)この世界ごと愛したい
今日もいつものように、本の虫になる。
すると普段は誰も来ない、こんな時間にも関わらず書庫の扉が開く。
「…まだ起きてたのか?」
「うん。」
るうは私を見て驚いたように見えた。
時計を見たらもう深夜を回っていて、それは驚くかと納得した。
「ついつい時間忘れちゃって。もう部屋に戻るから大丈夫。るうはどうしたの?」
「ハルの明日の資料。ここにあるって聞いたんで準備しとこうと思っただけだ。」
「…そっか。」
私は座っていた梯子からピョンっと飛び降りて、持ち帰る本を抱えて部屋へ戻ろうとする。
「…リン。」
「ん?」
「……いや、何でもない。」
私を呼び止めたけど、そう言って私から目を逸らした。
「…おやすみ、るう。」
「ああ、おやすみ。」
ハルのことで大忙しになったるうは、もう私を朝起こしてはくれない。
大好きだったコーヒーも、今は他のメイドさんや使用人が準備してくれている。
その手を離したのも、私だ。