(一)この世界ごと愛したい
しつこいハルに私がげんなりしていると、驚くほど早くるうがジジイを連れて戻ってきた。
「…ジャジャ馬め。」
「相変わらずうるさいなー。」
「綺麗には戻らんぞ。」
「別にいいよ。綺麗にしといても何の得にもならないし。」
ジジイの治療を、不貞腐れつつ受ける私。
「…先生はまるで預言者じゃな。」
「先生?」
「お前の婿だ。お前が怪我した時に使えと譲ってくださった薬がある。」
レンもマメだな。
一体いつの間に薬のやり取りなんてしてたんだろう。
婚儀の時、あの短い時間で…?それじゃあレンはあの時から私が帰国できると思ってたってことか?
「…大した預言者だね。」
「先生はワシに手紙を忍ばせていた。そこにリンのセザールで治療した経過を添えてな。」
「そんなに怪我した覚えないけど。」
「医術師にとって、病歴は何より重要な情報なんじゃ。それで救える命もある。ワシはそんな先生に、お前の治療経過を追記して返さねばならん。だから話せ、リン。」
レンの名前を出すなんて狡いなー。
どこにいたって、レンは私の主治医でいてくれようとしているんだね。