一途な海上自衛官は時を超えた最愛で初恋妻を離さない~100年越しの再愛~【自衛官シリーズ】
 晃輝がその画面をタップして説明書きを開いた。

 海と繋がっている大きないけすに面したエリアでは、手ぶらで行っても気軽に釣りを楽しめると書いてある。釣った魚を園内のレストランで食べることもできるようだ。

 笑顔で糸を垂らす親子の写真に、芽衣の頭に懐かしい思い出が浮かんだ。

 両親と暮らしていた頃、休日になると父はよく芽衣を釣りに連れていってくれた。釣りの天才だと自称していた父と行くと本当によく釣れた。

 その頃の芽衣は食べるのが楽しみというよりはとにかくたくさん釣れるのが嬉しくて楽しくて土曜日になると父に釣りに行こうとせがんだのだ。

 両親が亡くなってからは一度もやっていないけれど……。

「楽しそう……」

 竿をくいくいっと引かれた時のドキドキと、父の合図に合わせてリールをぐるぐると回す時のわくわくを思い出しながら芽衣は不思議そうに自分を見つめる晃輝に向かって口を開いた。

「小さい頃、父によく連れて行ってもらったんです。すごくたくさん釣れるんですよ。三人では食べきれないくらい。だから近所の人に差し上げるんですけど、それでも余るので、母に怒られたりして」

 途中でやめてくればよかったのにと言って、ぷんぷんしながら大量の魚を捌いて冷凍していた母を思い出す。

 父は気の優しい人でちょっと強気な母にいつも叱られていた。でも芽衣の目から見てそれがふたりが仲良しの証拠のように思えたのだ。

 そんなことを思い出して芽衣の口元に自然と笑みが浮かんだ。そんな風に家族の思い出を懐かしく思い出すのはずいぶん久しぶりだ。

「久しぶりに、やりたいな」

 呟くと、晃輝が少し驚いたような顔をした。当然だ。海が苦手だと言っているのに釣りがしたいなんて。

 芽衣だって今の今までこんな気持ちになるなんてと、自分で自分に驚いている。けれど無理をしているわけでもない自然な気持ちだった。

 そもそもこんな画面を見ることすら、少し前は避けていたのに。晃樹が隣にいると少しだけ自分だけではできないことができるような気がする。

 そんな自分に気がついて、芽衣は彼がはじめてうみかぜの夜営業に来てくれた時のことを思い出す。あの時も苦手なはずの海の話をもっと聞きたいと思ったのだ。

「晃輝さん、釣りは嫌いですか?」

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