地雷カプブルー
『良かった、霞くんが無事で』
大家さんは俺の肩を両手でつかむと
『君の家族も仕事に行っていて無事だよ。他の住民の安否確認も取れてる。学校帰りの霞くんだけが、アパートの中に取り残されていないか心配だったんだ。でも良かった、無事で良かった』
心から俺の心配をしている大家さんは『もうすぐ消防車が来てくれる。危ないから絶対にアパートに近づかないでね』と残し、また誰かに電話を掛けながら去っていって。
――俺の部屋が燃えてる
現実が受け入れられずに放心状態だった俺は、つい悲しみをこぼしてしまったんだ。
『輝星が作ってくれた金メダルが燃えちゃう……俺の宝物なのに……』と。
輝星が俺のそばにいないと気づいたのは、視界に黒いランドセルが映りこんだから。
――輝星のランドセルだ。
『危ないからアパートに入るな! 焼け死ぬぞ! オイ、戻ってこい!』と男性の怒鳴り声が鼓膜に突き刺さって。
顔を上げたら、遠くに見えるアパートの階段を輝星が駆けあがっていて。
――俺が「金メダルが燃えちゃう」なんてつぶやいたからだ。
――輝星が炎に焼かれ、苦しみながらあの世に行ってしまったらどうしよう……
恐怖でいてもたってもいられなくなった俺は「火の中に飛び込んだらダメだ!」と止める大人たちの声を振り切り、燃えるアパートの中に駆けこんだ。